シリコンバレー／シーズン6（5）テシックス（Tethics）

『SILICON VALLEY（シリコンバレー）』は、エンジニアや起業家なら誰もが共感せずにはいられないストーリーが魅力のドラマです。最終シーズンに突入したこのシリーズは、主人公リチャード・ヘンドリクスとパイド・パイパー社の挑戦が、いよいよクライマックスへと向かう展開になっています。

このエピソードでは、リチャードが長年対立してきたギャビン・ベルソンに”倫理”というテーマで先手を取られてしまうという皮肉な状況に直面します。一方、ギルフォイルとモニカはマネジメント能力を疑問視され、社内での評価をめぐって競い合うことに。そして、クセの強い投資家ラス・ハンネマンも再登場し、さらなる混乱を巻き起こします。

果たしてリチャードはギャビンの偽善を暴くことができるのか？そして、パイド・パイパー社の未来はどうなるのか？

シーズン6の中でも特に社会風刺が効いたこのエピソードの見どころを、振り返っていきましょう！

このページの目次

1 ストーリー紹介
2 注目シーンと考察
3 2019年のIT事情とドラマの世界
4 感想
5 映画/ドラマ/アニメからマンガや雑誌といった電子書籍まで。U-NEXTひとつで楽しめます

ストーリー紹介

リチャードは、自分こそがシリコンバレーで最も倫理的な経営者だと信じていました。しかし、ギャビン・ベルソンが「Tethics」誓約を発表したことで立場が揺らぎます。一方、ギルフォイルとモニカは社内の評価をめぐって競い合いますが、モニカの試みは思わぬ方向へ…最終的には二人が共闘し、評価システムを停止させることを決断します。

そして、ジャレッドの暗躍やラス・ハンネマンの突飛な提案が、物語にさらなる混乱をもたらします。

このエピソードの展開を詳しく見ていきましょう！

ギャビン・ベルソンの「Tethics」誓約

ギャビン・ベルソンは、テック業界の倫理的問題に対応するためとして「Tethics」誓約を発表します。しかし、彼が過去に行ってきた数々のスキャンダルを考えれば、この誓約が本当に誠実なものなのかは疑わしいところです。

追い詰められるリチャード

業界全体で「Tethics」が広がる中、リチャードにも署名の圧力がかかります。投資家やアドバイザーたちは、イメージのために参加すべきだと主張しますが、リチャードはギャビンの偽善に屈することを拒みます。

パイド・パイパー社が誓約に署名しないことで「倫理観のない企業」と見なされるリスクもあり、決断を迫られます。

ギルフォイルとモニカの対決と共闘

パイド・パイパー社では、ギルフォイルとモニカのマネジメント能力が疑問視され、社内での支持を得るために競い合うことになります。

モニカのオタク媚び作戦の失敗

モニカは社員の支持を得るために、社内のオタク系エンジニアたちに寄り添おうとします。彼らが興味を持ちそうな話題を持ち出し、アニメやゲームの話をしながら親近感を演出しようとするのですが、エンジニアたちにはすぐに見抜かれてしまいます。

「本当は興味ないのに無理してる」と思われてしまい、逆に評価を下げる結果に…モニカの不器用な努力が裏目に出るこのシーンは、コミカルで見どころの一つです。

ギルフォイルの冷静な戦略

一方のギルフォイルは、感情的なアプローチをせず、社員たちにとって最も合理的な判断を促すことに徹します。彼の冷静で的確な指示によって、一部の社員は「この人についていった方が楽だ」と考え始めます。

評価システムの問題点と共闘

モニカとギルフォイルは、社員が上司を評価する社内システムが、社内政治を助長し、職場の雰囲気を悪化させていることに気づきます。このシステムのせいで、社員たちは本来の仕事ではなく、どの上司に良い評価をつけるべきかを優先するようになっていました。

二人は対立をやめ、協力して評価システムを停止させることを決断します。

ジャレッドの暗躍

リチャードのもとへ戻ったジャレッドは、かつての弟子であるホールデンを操ろうとします。

ガスライティングの手口

ジャレッドはホールデンの自信を揺さぶり、精神的に追い詰めながら自分の思い通りにコントロールしようとします。彼はホールデンの小さなミスを過剰に指摘し、「君のやり方は間違っている」と繰り返し吹き込みます。その結果、ホールデンは次第に自分の判断に確信が持てなくなり、ジャレッドの言うことを疑えなくなっていきます。

このジャレッドの巧妙な操作術が、物語に独特の不気味さを加えています。

ラス・ハンネマンの登場

破天荒な億万長者、ラス・ハンネマンが再登場します。彼は自身のイベント「RussFest」にパイド・パイパー社の無料インターネット・インフラを導入しようと持ちかけます。

パイド・パイパー社の新たな課題

ラス・ハンネマンの提案は、パイド・パイパー社にとって大きなチャンスでもあり、同時にリスクも伴うものでした。リチャードはこの申し出を受けるべきかどうか悩むことになります。

ラスは相変わらず大げさな身振りと独特の話し方でリチャードを説得しようとしますが、彼の提案には技術的な問題も山積みです。

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注目シーンと考察

このエピソードには、『SILICON VALLEY（シリコンバレー）』らしい皮肉やユーモアがたっぷり詰まったシーンが多く登場します。特に、ギャビンの「Tethics」誓約に対するリチャードの葛藤、モニカの必死の奮闘と失敗、そしてギルフォイルとの共闘は見逃せません。

ここでは、印象的なシーンをピックアップして掘り下げていきます！

リチャードの葛藤とギャビンの偽善

リチャードは「Tethics」誓約を巡り、強い倫理観と現実の間で揺れ動きます。一方のギャビンは相変わらずの自己陶酔ぶりを見せます。

ギャビン・ベルソンが「Tethics」を発表するシーンは、彼の偽善がこれでもかと詰まっています。過去に数々の不正や倫理的に問題のある行動をしてきたギャビンが、まるで救世主のようにテクノロジー業界の倫理向上を訴えるのは、皮肉以外の何ものでもありません。それに対し、リチャードは強い不快感を抱きます。

しかし、皮肉なことに「Tethics」は業界のトレンドとなり、パイド・パイパー社にもその波が押し寄せます。投資家や顧問たちは、会社のイメージを守るために誓約に署名するよう圧力をかけます。リチャードはギャビンの偽善を暴こうと躍起になりますが、次第に「そもそも本当に倫理的な経営とは何なのか？」という深い問いに直面します。

モニカのオタク媚び作戦と失敗

モニカは社員の支持を得るために、オタクエンジニアたちに媚びようとします。

しかし、無理をしていることがバレバレで、逆に評価を下げることに。

モニカはマネジメント能力を疑問視される中で、社員の支持を得るべく、社内のエンジニアたちの趣味に合わせようとします。彼らの話題に合わせるために、アニメやゲームの知識を詰め込んで挑みますが、オタク文化に馴染みがないモニカが一夜漬けでどうにかなるものではありません。

会話の中でズレた発言をしたり、的外れなコスプレ（レイア姫の髪型にしてみたり）をすることで、逆に「無理してる感」が丸出しになってしまいます。

エンジニアたちはモニカの努力を冷静に見抜き、「上辺だけで親しみを演出しても、結局僕たちのことは分かっていない」と評価を下げてしまいます。この一連のやりとりは、シリコンバレーのエンジニア文化を知らない人が無理に馴染もうとすることの難しさを見事に描いています。

ギルフォイルとモニカの共闘

対立していたギルフォイルとモニカは、最終的に評価システムの問題点に気づき、共闘することになります。

社内の評価システムは、上司が部下を評価するだけでなく、部下も上司を評価できる仕組みになっていました。しかし、これが思わぬ弊害を生んでいました。社員たちは本来の仕事よりも「どうすれば上司から高評価を得られるか」を優先するようになり、チームの生産性が低下していたのです。

この事態に気づいたモニカとギルフォイルは、対立をやめ、システムの停止を決断します。このシーンは、評価制度が企業文化に与える影響をシニカルに描きつつ、二人の成長を示す重要な瞬間となっています。

ラス・ハンネマンの無茶な提案

ラス・ハンネマンは、相変わらずの豪快なキャラクターでリチャードに無茶な提案を持ちかけます。

ラスは自身のイベント「RussFest」のために、パイド・パイパー社の無料インターネット・インフラを導入しようとします。しかし、その実現には莫大なリソースが必要で、会社の経営にも影響を及ぼしかねない案件でした。それでもラスは「これは歴史に残るビジネスチャンスだ！」と熱弁を振るい、リチャードを強引に巻き込もうとします。

ラスの無茶ぶりと、それに振り回されるリチャードの構図は、このドラマの定番ともいえる展開です。

技術的な理想と現実のギャップを象徴するこのやりとりは、シリーズを通じて変わらないシリコンバレーの混沌とした世界観を見せてくれます。

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2019年のIT事情とドラマの世界

『SILICON VALLEY（シリコンバレー）』の最終シーズンが放映された2019年は、IT業界が大きく進化し続けていた時期でした。AI技術の進展、5Gの普及準備、ブロックチェーンの台頭など、さまざまな技術革新が話題になっていました。

このエピソードでは、業界の「倫理問題」に焦点が当てられていますが、2019年の現実世界でも、GAFA（Google、Amazon、Facebook、Apple）を中心としたテック企業の倫理が問われる出来事が多発していました。

また、エンジニア文化とマネジメントのギャップを象徴するモニカのエピソードは、現実のシリコンバレーの職場環境をユーモラスに描いています。エンジニア特有のカルチャーや価値観が、企業の管理層とは大きく異なることは、2019年当時のシリコンバレーでも顕著でした。

ドラマ内で描かれた技術と、実際の2019年のIT事情を比較してみましょう！

AIと倫理問題

ドラマではギャビン・ベルソンが「Tethics」誓約を打ち出しますが、2019年の現実世界でもテック企業の倫理問題が頻繁に取り沙汰されていました。

2019年は、AI技術が急速に発展し、企業の意思決定や個人データの活用に深く関わるようになった年でした。特に、FacebookやGoogleが扱う個人データの管理方法が問題視され、規制強化の動きが進んでいました。この年、Googleの従業員は倫理的に問題があるとされたプロジェクトに対して抗議し、会社の決定に異議を唱えるという事態も発生しました。

ドラマの中では、「Tethics」が企業のイメージ向上のためのツールとして使われる一方で、実態が伴っていないという皮肉が描かれています。

現実のIT業界でも、企業が「倫理的なテック企業」を名乗りながら、裏ではユーザーデータを収集・活用しているという構図がありました。

AIの進化と倫理の課題

2019年には、AIが自動化業務やマーケティングに本格的に導入されましたが、一部のAIアルゴリズムがバイアスを含むことが問題視されていました。

5Gの到来とインターネットの未来

ラス・ハンネマンが「RussFest」で無料のインターネットを提供しようとするアイデアは、2019年当時の通信技術の進展と重なる部分があります。

2019年は、5G通信の商用化が目前に迫っていた時期で、世界各国で5Gインフラの整備が進んでいました。特にアメリカでは、大手通信会社が5Gサービスを開始し、高速通信の時代が近づいていました。しかし、一方で「5Gの普及がプライバシーやセキュリティにどのような影響を与えるのか？」という議論も活発になっていました。

ラスの無計画な「無料インターネット」は、まるでシリコンバレーの投資家たちが「世界を変える」と言いながら、ビジョンだけを掲げて突っ走る様子を風刺しているようにも見えます。実際に、2019年当時も、民間企業による無料インターネット構想（例：Facebookの「Free Basics」）が議論されており、賛否が分かれていました。

5GとIoTの可能性

5Gの普及は、IoT（モノのインターネット）の進化を加速させました。低遅延・高速通信によって、スマートシティや自動運転技術の実用化が進んでいました。

エンジニア文化とマネジメントのギャップ

モニカのエピソードは、エンジニア文化とマネジメント層の間にある大きなギャップを象徴しています。特に、シリコンバレーのエンジニアたちは独特の価値観や趣味を持ち、彼らに合わせようとするモニカの奮闘は現実の職場でも見られる光景です。

エンジニアの多くは、アニメやゲーム、オープンソース文化に親しんでおり、社内コミュニティもそうした趣味を中心に形成されることがよくあります。しかし、そこに馴染もうとする非エンジニアのマネージャーが、表面的な知識で関わろうとすると、すぐに見抜かれてしまいます。

モニカの「オタク媚び」は、まさにその典型的な失敗例です。

2019年当時も、企業がエンジニア文化を理解せずに「オタクフレンドリー」な雰囲気を作ろうとする試みが見られましたが、形だけの施策はかえって逆効果になることが多かったのです。

現実のエンジニア文化の例

例えば、GoogleやFacebookのエンジニアたちの間では、社内でアニメ上映会が開かれたり、コードレビューの場でゲームの話が飛び交うことがありました。エンジニアたちは、こうした文化を共有することで職場の一体感を強めていたのです。

2019年のIT事情から見たSILICON VALLEYのリアリティ

このエピソードでは、テック業界の倫理、インターネットの未来、AIの活用など、2019年当時に話題となっていた技術トレンドが巧妙に取り入れられています。

ドラマの中で描かれるテクノロジーは、現実の技術と比較すると少し誇張されている部分もありますが、それでも「シリコンバレーの起業家たちが考えそうなこと」を的確に再現しています。

2019年は、GAFAの影響力が社会問題化し、テック業界全体が大きな変革の時期にあったことを考えると、このエピソードはまさにその時代の風刺として楽しめる内容になっています。

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感想

シリコンバレーの倫理観を問う「Tethics」は、ドラマの風刺的な魅力が詰まったエピソードです。リチャードがギャビンの偽善に立ち向かおうとする一方で、社内ではモニカとギルフォイルの対立が勃発し、ラス・ハンネマンはいつもの無茶なアイデアを持ち込んできます。

シリコンバレーらしい混沌とした雰囲気の中、それぞれのキャラクターが自分の立場を模索する姿が描かれます。

特に、モニカがエンジニアたちの信頼を得ようと必死にオタク文化に寄り添おうとするも、あっさり見抜かれて逆効果になる場面は印象的です。エンジニア文化とビジネス層の価値観のギャップがユーモラスに描かれ、職場のリアルな空気を感じさせます。

一方で、ギルフォイルは冷静な論理的思考で問題を解決しようとし、結果的にモニカと手を組む展開は興味深いです。

また、ラスの「RussFest」構想は、当時の5G普及や無料インターネット構想を思わせるものがあり、テクノロジー業界の動向を皮肉る要素としても楽しめます。このドラマの魅力は、現実のシリコンバレーの出来事と絶妙にリンクしている点にあります。当時の技術革新を知ると、より一層エピソードの背景が深く感じられます。

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